・第218回月例会 −歴史・文化に親しむ会−
テーマ: 近畿におけるハンセン病患者の歴史
〜 光明皇后から邑久光明園 〜
日 時: 2024年10月23日(水曜日) 15:30〜17:00
講 師: 高鳥毛 敏雄(たかとりげ としお)様
関西大学 社会安全学部 特別契約教授
ハンセン病(らい病)は、紀元前から有り、日本書記と今昔物語の中にも癩(らい)の記述があります。結核と同じ抗酸菌による呼吸器感染症で、感染力は極めて弱いが、皮膚と末梢神経の病気で、人目につく顔や足の変形と障害(膿汁)等により人から嫌われました。こんなハンセン病の救済等の歴史について、奈良時代の光明皇后の救済事業、鎌倉時代に奈良につくられた重病者を保護・救済する北山十八間戸という福祉施設(1921年に国の史跡指定)、大勢のハンセン病者を受け入れた小栗判官蘇生の湯の峰温泉(熊野)、ハンセン病に効く大風子油の提供と患者への自宅開放を行った堺の岡村平兵衛(1852-1934)救済事業、京都や大阪に集まった流浪患者に対する京都大学や大阪大学の診療入院治療、ハンセン病患者の存在を「文明国の恥」と考えた政府による隔離収容施設(全国5箇所)の開設等について、話していただきました。1909年に、近畿・北陸の施設として大阪に外島保養院が開設されましたが、室戸台風の高潮・高波により壊滅、再建しようとしたが住民の反対運動が厳しく断念、最終的に離島の「長島」の空地に1938年に国立療養所邑久光明園がつくられ、現在に至っている事。ハンセン病は、治療薬が開発され、現在は、患者ゼロ。隔離収容する「らい予防法」は1996年に廃止。しかしながら、偏見差別は残っており、全国の療養所で生活している方が現在もおられるそうです。ハンセン病とその歴史を正しく理解し伝えてゆく活動が必要だとお話を締め括られました。
・第217回月例会 −歴史・文化に親しむ会−
テーマ: 辞世の俳句を読む 女性俳句の辞世
第3回目(最終)
日 時: 2024年 9月25日(水曜日) 15:30〜17:00
講 師: 光田 和伸(みつた かずのぶ)様
国文学者
近世の女性俳人である秋色(しゅうしき)、千代女(ちよじょ)、星布(せいふ)、近代の女性俳人である秀野(ひでの)等、近世から現代の9名の女性俳人の句を紹介いただきました。秋色は、芭蕉門下其角の弟子で、辞世句は「見し夢の さめての色の かきつばた」。かきつばたは、水辺に茎や葉を伸ばし、その上に突き出た空間て咲くそうです。これを、「この世を離脱して咲く」との講師の解説に、夢を追いかけた心根を感じる句でした。千代女は、蕪村と同じ年代の才気あふれる俳人で、辞世句は、「月も見て我はこの世をかしく哉」。「仲秋の名月も見て、思い残すことはない。おいとまいたします。」という句意だそうです。「かしく」は、女性の手紙末尾の挨拶ことばで、サラッとした言葉に重みを感じた句でした。星布は、女蕪村と呼ばれる程の天才的な俳人で、辞世句は、「咲く花もちれるも阿字の自在哉」。講師から「阿字観」の解説をしていただいたが、句意の理解は難しかった。秀野は、高浜虚子に俳句を学び、短歌を与謝野明子に学んだ、壮絶の命をうたった俳人で、辞世句は、「蝉時雨子は担送車に追いつけず」。担送車は、ストレッチャ―の事で、置いて行く子に最後まで心を残した母としての絶唱に心打たれました。俳句の理解には、語句の意味や対象物の特質を知る事が大切なのだと、改めて、感じたお話しでした。
・第216回月例会 −歴史・文化に親しむ会−
台風10号来襲に備えて、中止させていただきました。
下記ご講演は、2025年にご講演いただける様に調整してまいります。
テーマ: FC岐阜のプロサッカーを活かした地域活性化
日 時: 2024年 8月28日(水曜日) 15:30〜17:00
講 師: 宮田 博之(みやた ひろゆき) 様
Leopalace Guam Corporation 顧問
下記のお話をしていただく予定でした。
Jリーグが開始されて今年で30年となります。プロ野球、大相撲と共に国民的スポーツとなったサッカーは特に地域密着度の高い大衆参加型スポーツとなっております。Jリーグ参加チームはJ1〜J3まで、全国で60チームとなっており、全国各地に広がり、スポーツ施設の充実が図られております。今回の講師は企業経営のトップから出身地岐阜の経済発展の為に、サッカーチームを立ち上げ、地域の企業やサポーターとともに地域の活性化を図るために奮闘努力されておられます。
今回の講演では、企業経営者としての経験から、地域活性化のための地域企業とのパートナーとしての取り組み、市町村の役所との取り組み等についてお話をいただきます。宮田講師は、株式会社三井住友建設代表取締役社長、株式会社レオパリス21取締役を歴任され、現在は顧問として会社経営にかかわりながら、出身地岐阜の経済発展を目指して、プロサッカーチームを軸とした地域の活性化の為に、現在株式会社岐阜フットボール協会会長を務められておられます。
・第215回月例会 −歴史・文化に親しむ会−
テーマ: 「宗教記者」という仕事
日 時: 2024年 7月24日(水曜日) 15:30〜17:00
場 所: 大阪公立大学 文化交流センター
大阪市北区梅田1-2-2-600 大阪駅前第2ビル6階
講 師: 花澤 茂人(はなざわ しげと)様
毎日新聞 大阪本社学芸部 専門記者
新聞記者というと、政治や事件の動きを追う政治部や社会部のジャーナリストを思い浮かべる人が多いのではと思います。そんな中にあって講師は「学芸部」という部署で「宗教」をメインに取材されています。講師は、「どうにもならない苦悩に目を向け、必要以上に苦しまないために、宗教の知恵を改めて見直すきっかけとなる情報を発信する」のが宗教記者だと思い、仕事をされているそうです。紹介いただいた、講師のコラム記事「概要:東日本大震災直後に行われた奈良東大寺『お水取り』行事にて、北河原公敬別当が、参拝者に、急遽、スピーカで、3つの願い(亡くなった方に祈りを。困っている方に心を寄せよ。それぞれの立場で力を尽くせ)を呼び掛けた。聞こえてきた言葉に涙が出た。祈る事、思いをはせる事が、行動につながり、力になっていく」に宗教記者としての思いが表れていると感じました。2015〜17年に宗教学者の釈徹宗さんと多様な信仰を持ち暮らしている外国人たちの祈りの場をめぐった連載「異教の隣人」活動。毎日新聞が後援している「宗派の枠を超えて若手僧侶たちが法話を披露し合い『もう一度会いたいお坊さん』ナンバーワンを決めるH1グランプリ。旧統一教会等のカルト脱会支援する僧侶の取材。等、幅広く興味深い取材報道活動のご紹介をいただきました。
・第214回月例会 −歴史・文化に親しむ会−
テーマ: 「辞世の俳句」を読む 第2回目
芭蕉・西鶴・蕪村・一茶の辞世
日 時: 2024年 6月26日(水曜日) 15:30〜17:00
場 所: 大阪公立大学 文化交流センター
大阪市北区梅田1-2-2-600 大阪駅前第2ビル6階
講 師: 光田 和伸(みつた かずのぶ) 様
国文学者
江戸時代の三大俳人といえば、松尾芭蕉、与謝蕪村、小林一茶ですが、以外にも芭蕉とほぼ同じ時代に活躍した井原西鶴も天才肌の俳人でもあったそうです。この四名の男性俳人のエピソードと辞世の句の紹介をいただきました。芭蕉の辞世の句といえば「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」が有名ですが、最後の作品は、亡くなる3日前に詠んだ「清滝や波に散り込む青松葉」だそうで、以前詠んだ句を改変した句だそうです。仏道を求め続けた俳号「桃青」が、妥協無く推敲し作品の完成度の高さを求め続けた事が分ります。芭蕉が四十代になって俳句の道に入ったのに対して、西鶴は二十代で俳諧師となったそうです。矢数俳諧の創始者で、42歳の時には、住吉神社で矢数俳諧に挑み1日に23500句(四秒で一句)を詠んだそうです。これを最後に、俳句の道から離れ、浮世草子「好色一代男」等の人気の小説家に転身しました。西鶴は、晩年俳壇に戻り、辞世の句「浮世の月見過しにけり末二年」を詠みました。「人生五十年というに二年も長生きした。」という句は、後悔を告白した句だそうです。蕪村は、俳人であり、国宝になった作品もある画家。辞世の句「しら梅に明くる夜ばかりとなりにけり」は、絵の様に情景が浮かぶ美しい句でした。そして、一茶の辞世の句「是がまあつひの死所(しにど)かよ雪五尺」は、晩年の寂しい暮らしぶりを感じる句でした。
・第213回月例会 −歴史・文化に親しむ会−
テーマ: 認知症の治療と予防の未来
− アルツハイマー病を中心に −
日 時: 2024年 5月22日(水曜日) 15:30〜17:00
場 所: 大阪公立大学 文化交流センター
大阪市北区梅田1-2-2-600 大阪駅前第2ビル6階
講 師: 稲垣 千代子(いながき ちよこ) 様
関西医科大学 名誉教授(病理学)
日本の65歳以上の人口は、2025年には約3680万人(人口の30%)となり、65歳以上の5人に1人が認知症を発症するとしています。認知症の内、もっとも多いアルツハイマー病を中心に、認知症の概要、治療薬の現状と未来、予防についてお話をして頂きました。脳内で作られるアミロイドβ(Aβ)というたんぱく質は、通常は分解・排出されるが、Aβ同士がくっつき異常なAβが生じると、健康な神経細胞にとりつき、Aβの毒素で神経細胞が死滅、脳が委縮する事で、アルツハイマ―病は進行するのだそうです。発症する20年前からAβは蓄積されるそうです。現在の代表的な治療薬は、昨年末に認可されたレガネマブで、進行を27%遅らせる事ができるそうだ。それで、未来の治療薬を研究開発中で、アセチルIGLが、Aβの毒素を遮断して認知症の進行を止められる可能性がある事を発見できたそうです。予防については、食生活を整え、運動に心がける事が大切、イノシトールリン脂質含有食品(大豆、等)やイノシトール含有食品(オクラ、オレンジ、鶏肉等)の摂取も有効だと話されました。講師は、毎朝、コップに豆乳と牛乳を半々注いで飲んでおられるそうです。認知症の進行を止める治療薬を加速開発して欲しいと強く思ったご講演でした。
・第212回月例会 −歴史・文化に親しむ会−
テーマ: 動物王ハーゲンベックの「ロストワールド」
− 巨大恐竜・ドイツ帝国に出現す −
日 時: 2024年 4月24日(水曜日) 15:30〜17:00
場 所: 大阪公立大学 文化交流センター
大阪市北区梅田1-2-2-600 大阪駅前第2ビル6階
講 師: 溝井 裕一(みぞい ゆういち) 様
関西大学 文学部教授
ハーゲンベック動物園はドイツ・ハンブルクのシュテリンゲン地区にある動物園である。動物商のカール・ハーゲンベックは、人間(ラップランド人、ヌビア人等等々)と動物セットで異教の文化と自然を展示する人間動物園事業をヨーロッパ各地の動物園で行ったり、動物の調教や餌付けのスキルを活かしてサーカス事業を行うと共に、動物をその生息環境に近い環境で恒久的に展示することを夢見て、1907年に初の無柵放養式展示のハーゲンベック動物園を作ったそうです。また、1908年に、動物園の敷地を拡張して、実物大恐竜模型の展示を計画し、池・岩・植物により古代世界「恐竜園」を再現しました。動物彫刻家ヨーゼフ・バレンベルクにより科学者の承認を獲得しながら恐竜をコンクリートで再現したそうです。ディプロドクス、イグアノドン、トリケラトプス等を紹介いただきました。ハーゲンベックは、アフリカ・ローデシアに恐竜捕獲隊を派遣したそうだ。名古屋の東山動植物園にハーゲンベック動物園がモデルの実物大恐竜模型がつくられているそうです。なぜ、恐竜園の研究を始めたのかについても話されました。動物園や水族館では、現在、動物福祉や動物の権利が叫ばれ、本物の生き物の展示が困難になってきています。生きた動物を使わないで、リアルな自然環境を構築するヒントが得られるのではと思い、研究を行っているそうです。動物園の動物不足を感じている私にとって、研究成果を期待したいと強く思うご講演でした。
・第211回月例会 −歴史・文化に親しむ会−
テーマ: 辞世と俳句 第 1 回講座
〜 日本文学における辞世の源流 〜
日 時: 2024年 3月27日(水曜日) 15:30〜17:00
場 所: 大阪公立大学 文化交流センター
大阪市北区梅田1-2-2-600 大阪駅前第2ビル6階
講 師: 光田 和伸(みつた かずのぶ) 様
(国文学者)
辞世の句の様な文化は、日本で生まれたもので、欧米の人は驚く文化だそうです。欧米の人にとって死は、不条理なもので、それを日本人はやすやすと受け入れ死んでいく。その様な辞世の源流とその変容についてお話をいただきました。@「自傷歌」 辞世の句の源流というべきもので、『不本意の死」』に臨んで、『自らの運命を哀惜する和歌』だそうです。飛鳥時代の有間皇子が詠んだ『岩代の浜松が枝を引き結びま幸くあらばまたかへりみむ』や、浅野内匠頭長矩の『風さそふ花よりもなおほ我はまた春のなごりをいかにとかせん』等を例に説明いただきました。そして、この自傷歌の自傷感は、天皇や家族の為といったものを帯び変容していったそうです。A「遺偈(ゆいげ)」 禅宗の師僧が、死に臨んで自らの悟りの姿を弟子に示すもので、円相(○)や、沢庵の『夢』を例に示されました。B俳句形式 最初に俳句で辞世を詠んだ斎藤徳元の『月夜』と『』戯言を付く世』の掛け詞が妙味の『今日まで生きたはごとをつくよかな』や、赤穂浪士の大高源吾(子葉)の武士風の潔い詠みぶりの『梅で飲む茶屋もあるべし死出の旅』等を紹介いただきました。ご講演の中で、講師が心打たれた近現代の辞世俳句として紹介いただいた、正岡子規の『痰一斗糸瓜の水も間にあはず』と、横溝正史の『団栗の落ちて空しきアスファルト』が、月例会終了後、いつまでも心に余韻が残ったご講演でした。
・第210回月例会 −歴史・文化に親しむ会−
テーマ: 千年後に迫りくる大洪水
日 時: 2024年 2月28日(水曜日) 15:30〜17:00
場 所: 大阪公立大学 文化交流センター
大阪市北区梅田1-2-2-600 大阪駅前第2ビル6階
講 師: 津田 慎一(つだ しんいち) 様
元 東海大学工学部航空宇宙学科教授
講師は、大学時代にロケットの研究、メーカーで宇宙開発(人工衛星、宇宙ステーション等)に従事、その後、東海大学で後進の指導に当たられ、退職後、史跡のボランティアガイドをしながら、歴史の調査を始め、今迄の定説に一石を投じる「武蔵戦国記 後北条と扇谷上杉の戦い」等、複数の著書を出版されました。本講演では、主に、日本書紀に書かれた巨大洪水について、宇宙工学者の知見から解き明かしていただきました。まず、紀元二百年頃(弥生時代後期)の古代の奈良盆地は大和湖と呼ばれる湖(大阪湾につながる)で、石上神宮は、その水辺にあったと日本書記(巻第九)の新羅出兵の記述から読み取れるそうです。海面が、現在と比べ百メートル程上昇していた事になります。岡山、広島、九州等にも弥生時代後期に海面が百メートル程上昇していたという痕跡が見つかっているとの事。また、「新羅の国の中にまで海水が上ってきた」との記述も有り、朝鮮半島でも海面上昇があった事を示しているそうだ。海面上昇シュミレータFloodMapによる検証結果と符合するそうです。講師は、「海面上昇の原因は、紀元0年頃に日本・アジアで生じた大洪水だ。アトランティス消滅、黒海洪水、ノアの洪水、そして、日本・アジア大洪水と三千年毎に順次起きており、『三千年毎に地球に接近する惑星Mに起因』している。次の大洪水はは千年後だ。」と話されました。
・第209回月例会 −歴史・文化に親しむ会−
テーマ: エネルギー転換に挑むドイツ
日 時: 2024年 1月24日(水曜日) 15:30〜17:00
場 所: 大阪公立大学 文化交流センター
大阪市北区梅田1-2-2-600 大阪駅前第2ビル6階
講 師: 藤澤 一夫(ふじさわ かずお) 様
和光純薬ドイツ法人 元社長
ドイツは、2022年末に予定していた脱原発も、遅れたとはいえ、2023年4月15日に達成しました。また、ウクライナ戦争によるエネルギー危機に見舞われながらも化石燃料から再生可能エネルギーへのエネルギー転換を積極的に進めています。こんなエネルギー転換への取り組み状況についてお話をしていただきました。
お話をお聞きして、ビックリしたのは、原発全廃を決めた2000年時点で,総発電量の約30%が原子力、60%が火力(天然ガス含む)に依存していたのに、原子力をゼロにし、火力発電の依存率を減らし、逆に、再生可能エネルギーで約45%の発電量を賄う迄にインフラ整備を推進している事でした。2030年には、総発電量の80%を再生可能エネルギーに転換するのが目標との事。再生可能エネルギーとしては、風力、太陽光、バイオマス、水力である。総発電量の約20%を風力で実現しており、ドイツは約2万8千基(日本約二千6百基)を設置、高さ二百メートルを超える発電機もあるそうです。そして、バイオマスは、その発電設備がドイツ国内に約1万施設も設置されているそうだ。バイオマスのエネルギー植物の主は食物「とうもろこし」だとの事。メリット、デメリットの折り合いをつけながらのドイツの推進力は、すごいと感じました。