・第148回月例会 −歴史・文化に親しむ会−
テーマ: バックパックを背負って 〜 私の仏教遺跡歴訪 〜
日 時: 2018年12月19日(水曜日) 16:00〜17:30
講 師: 渡邉 甫男 様
( 浄土宗永金山常簒寺 少僧都 )
渡邊様は福井県小浜市の浄土宗の寺にお生まれになり、京都大学数理工学科を卒業後、世界に冠たる広告会社にご勤務、早期退職されたあと還暦を前に知恩院で修行、僧侶資格を取得され、現在は神戸の常纂寺の非常勤僧侶をされています。僧侶資格を得した後、バックパックを背負い、インドから中国へ、西遊記でも知られた玄奘三蔵(三蔵法師)ゆかりの仏教遺跡をたどる一人旅をされたそうです。ヤナゴンの瞑想センターの食事等、経験されたたくさんの利他行(他人に対する善きはからい)について写真と共に紹介いただきました。また、この春、念願の四国遍路を通しで歩かれ、たくさんのお接待(利他行)に涙したそうです。四国遍路の三割が外国人だそうで、ヨーロッパ系の方々との交流写真を拝見して、宗教等に関係なく人間同士で支え助け合う根本的精神に魅了されるからだと感じました。「金だけ、自分だけ」の日本や世界の風潮が色濃くなる今、「利他行が世界を救う」は心に響きました。
・第147回月例会 −歴史・文化に親しむ会−
テーマ: 近代琳派・神坂雪佳
〜 琳派の伝統とモダンデザイン 〜
日 時: 2018年11月28日(水曜日) 16:00〜17:30
講 師: 福井 麻純 (ふくい ますみ) 様
( 細見美術館 主任学芸員 )
近代の琳派として人気の神坂雪佳(1866〜1942)は、琳派誕生の地・京都に生まれ、本阿弥光悦や尾形光琳に傾倒し、伝統的な主題やモチーフ、琳派の表現方法を取り入れ、新しい時代にふさわしい図案を生み出し、京都の工芸界を牽引しました。染織、陶芸、漆芸から室内装飾や庭園まで幅広い活動を展開、絵画作品も多数残っている。伊勢物語から材をとった「八橋」、愛らしくのどかな木版色摺絵本「百々世草」、モダンな蝶の図案集「蝶千種」、波や水の文様の図案集「海路」、流水紋を緩やかに配した「水の図 向附皿」、「菊花透し彫鉢」の陶磁器図案、ひょうひょうとした図柄が並ぶ「滑稽図案」等の作品をご紹介頂きました。また、雪佳が、平安時代の「料紙装飾」等古い物に学び、「フランス新美術アルヌーボーの曲線応用は、藤原鎌倉時代の日本製品に凡て使われており、今更珍しく蝶々する程の事にあらず」と談じた事をご紹介頂きました。日本の伝統美をもっと大切にすべきと感じました。
・第146回月例会 −歴史・文化に親しむ会−
テーマ: 天皇陵古墳を知る
〜 百舌鳥・古市古墳群と世界文化遺産登録を前に 〜
日 時: 2018年10月24日(水曜日) 16:00〜17:30
講 師: 今尾 文昭 (いまお ふみあき) 様
( 関西大学非常勤講師・前橿原考古学研究所調査課課長 )
世界遺産に登録しようと政府がユネスコに推薦書を提出した「百舌鳥・古市古墳群」(大阪)を中心にお話を頂きました。宮内庁が管理する天皇陵古墳は、陵墓古墳とも呼ばれ、被葬者を特定した陵墓と、陵墓であっても被葬者を決めていない陵墓参考地もあるそうです。「百舌鳥・古市古墳群」構成資産49基のうち29基が陵墓だそうだ。この陵墓の内、巨大な土師ニサンザイ古墳は陵墓参考地だそうだ。課題は、@陵墓となっている古墳の名称問題、A周囲の小さな古墳を含めた大型前方後円墳の保存問題、B明治以来、非公開となっている陵墓公開問題などです。例えば、世界遺産登録申請の陵墓「仁徳天皇陵古墳」は、1976年、当時の同志社大学 森浩一先生が、被葬者を特定できないという理由で、「大山(だいせん)古墳」の名称を提言し教科書に採用された経緯があるそうだ。ただ、本年、宮内庁が堺市と共同で初めてこの陵墓の発掘調査を行う。課題解決の一歩で、時間をかけじっくりと合意形成して進めるべきと話されました。
・第145回月例会 −歴史・文化に親しむ会−
テーマ: 西行という生き方
日 時: 2018年 9月26日(水曜日) 16:00〜17:30
講 師: 吉田 究 (よしだ きわむ) 様
( 梅花女子大学名誉教授 )
平安時代末から鎌倉時代初頭、姓は佐藤、名は義清、法名を円位、武家に生まれ鳥羽上皇に北面武士として仕え、のち出家した歌僧「西行」は、心優しきイメージがあるが、実は、「たてたでしき」と評される激しい性格であったと、いくつかの逸話を例にお話いただきました。西行物語には、出家の妨げになると、娘を情けなく縁より下へ蹴落とし、妻や娘を捨てたと記されている。発心集(鴨長明)の「西行の娘の告白」箇所、濁点を取って「見てやみなんと心うかりつる・・」を解釈すると、父西行への憎悪が感じられる。娘の養い親は、「武き者(西行)のすぢというもの女子までうたてゆゆしきもの・・」と、西行に似て嫌な娘と評している。古今著聞集には、左大臣実定を訪ねた寝殿の棟に縄を張りめぐらしてあるのを見た西行は、「とびのゐるなにかはくるしきとて、うとみて帰りぬ」、「心はなほむかしにかはらずたてたでしかりけるなり」とある。鳶を止まらせない様にした意を考えず、実定の出世欲の表れと思い嫌って会わずに去った。激しい性格だった事が良く表れている。このように、私の西行観が変わった眼からうろこのお話しでした。
・第144回月例会 −歴史・文化に親しむ会−
テーマ: 老舗の永続繁盛の秘訣・日本型経営
日 時: 2018年 8月22日(水曜日) 16:00〜17:30
講 師: 前川 洋一郎 (まえかわ よういちろう) 様
( 老舗学研究会共同代表・老舗ジャーナリスト )
日本は創業後 百年以上の長寿企業「老舗」の多いことで有名で、五万社とも十万社ともいわれています。どのような事業運営を行ってきたか、「老舗経営」についてお話しいただきました。
第一に老舗が今日まで生き残ってきたメカニズムをひも解いていただきました。例えば、姫路の鍛冶屋・900年鉄一筋の姫路「明珍」は、農機具、武具、生活用品から音の商品へとイノベーションを繰り返したからだと。第ニに老舗に共通する日本型経営は、日本人の武士道→士濃工商実学→商人道→家訓→実業道→経営道という歴史の流れの中で育まれたものであると。第三に日本独自の老舗の家伝と社伝を分析し、会社が株主だけのものであるという欧米型経営に対して、日本型経営は、従業員、顧客、地元、株主等あらゆる利害関係者のものであると。そして、日本型経営は、最近脚光を浴びる「公益資本主義経営」に共通し、「老舗経営」が永続繁盛の秘訣であるとまとめられました。
これからの日本社会の目指すべきは先生のご指摘になられた「老舗の形体」をベースにした、日本型経営のトライアングル(社会第一、関係者第一、お客第一)を広くあまねく徹底することが大事だと思いました。
・第143回月例会 −歴史・文化に親しむ会−
テーマ: 仏像を読み解く − 役割と歴史について −
日 時: 2018年 7月25日(水曜日) 16:00〜17:30
講 師: 田中 夕子 ( たなか ゆうこ) 様
( 佛教大学総合研究所 特別研究員 )
仏像の役割と歴史についてお話を頂きました。紀元前四、五百年頃、釈迦は、35歳で悟りを得て、教えを説き、多くの弟子ができました。釈迦の教えを伝える為、仏塔等に仏伝を浮き彫りで表しましたが、最初は仏像ではなく、足の裏、樹木等で釈迦を表しました。仏像の成立は、紀元一世紀に入ってからだそうだ。日本への仏教伝来は公伝538年。その百年後頃から日本でも仏像が造られる様になりました。仏像はその役割により、悟りを開いた釈迦の姿をした如来(例:釈迦如来)、出家前の釈迦の姿をした菩薩(例:観音菩薩)、密教の真言を司る明王(例:不動明王)、仏教に取り入れられたインドの神々である天(例:四天王)の4つの役割グループに分かれるとの事。そして、仏像は、口角を上げ微笑む飛鳥時代、写実的で材料が多種多様である奈良時代、木彫像が隆盛し寄木造が完成した平安時代、玉眼が導入された鎌倉時代と、時代と共に造形表現等が変化してきたそうです。四天王寺のご本尊や、優しい少年の様な顔の阿修羅像が天である事等、理解が少し深まりました。
・第142回月例会 −歴史・文化に親しむ会−
テーマ: 明石が生んだ世界的中国陶磁コレクター・横河民輔
日 時: 2018年 6月27日(水曜日) 16:00〜17:30
講 師: 弓場 紀知 ( ゆば ただのり) 様
( 兵庫陶芸美術館 副館長 )
日本の中国陶磁研究の礎となった1500点を誇る東京国立博物館の世界最大規模の「横河コレクション」を中心にお話をいただきました。蒐集家には、数奇者とコレクターに分かれるそうです。茶道に熱心で茶道具を熱心に蒐集した出雲松江の城主松平不味公は、数寄者だそうだ。コレクターは、観賞を目的とした蒐集家で、「横河コレクション」を蒐集した横河民輔はコレクターだそうだ。横河民輔(兵庫県生れ)は、横河電機製作所の創立者で、蒐集は、実質、妻の下江が夫の同意を得て収集を本格化させたそうだ。下江は、陶磁器の鑑識眼が高く、中国の古代から系統を立て年代を追って名器を集め、後、下枝の発案によってコレクションが国立博物館に寄贈されたそうです。上野公園の西洋美術館の松方コレクションも有名です。神戸の川崎造船所初代社長松方幸次郎が日本人に見せてあげたいと蒐集したものだそうです。日本の芸術鑑賞の基礎は関西に縁のある2人の実業家によるものである事をもっとPRすべきだと思いました。
・第141回月例会 −歴史・文化に親しむ会−
テーマ: 映像で見るハンブルクのまちづくり
日 時: 2018年 5月23日(水曜日) 16:00〜17:30
講 師: 大場 茂明 (おおば しげあき) 様
( 大阪市立大学大学院文学研究科 教授 )
1989年以来大阪市の友好都市提携でもあるハンブルク市の衰退地区再生事業について、映像等でご紹介いただきました。再開発等で地域内部での格差が拡大し、衰退地区が出現するジェントリフィケーションの対策事業です。ザンクト・パウリ地区では、1980年代以降に老朽住宅修復や建物の用途転用の再開発を行った。なかでも、アルトバウ(1949年以前の建築物)は、天井高で気積が大きく、様々な用途に活用できる為、人気物件となった。結果、事務所やサービス業への進出、歓楽街から文化・娯楽地区への転換等が進み、可能性の街へと変貌しました。1990年にはStegが設立され、市内の住宅・事務所の管理、コミュニティづくり、歴史的建造物の保全と公共施設(病院や食肉処理場)への活用、公的資金投入による老朽住宅改修と家賃高騰防止等を行いました。結果、過度のジェントリフィケーションを抑止できたそうだ。これらの経験をそのまま日本へ適用する事は、制度上の違いから非現実的であり、景観条例や建築協定といった取組みが「まちづくり」だと締め括られました。
・第140回月例会 −歴史・文化に親しむ会−
テーマ: 「古事記・日本書紀から正しい古代史を再建する」
日 時: 2018年 4月25日(水曜日) 16:00〜17:30
講 師: 光田 和伸 (みつた かずのぶ) 様
( 国文学者 )
古事記・日本書紀は、共に7世紀に天武天皇の命によって編纂されました。古事記・日本書紀はきわめて嘘の少ない書物ですが、巧みな省略によって読者が誤った理解に陥るように操作されており、古事記伝を書いた本居宣長はそのことに気づいていたはずと、光田先生は考えられています。その箇所についてご講義いただきました。
古事記に出てくる順番に神を並べると、最初の神が、天御中主神で、11世の神が伊邪那岐神・伊邪那美神で、12世の三貴子(天照大御神、月読神、建速須佐之男神)を産み、建速須佐之男神から5世後(最初の神から18世)の神が大国主神(出雲大社の御祭神)となります。30世天迩岐志国迩岐志天津日高日子番能迩迩芸命(ニニギノミコト)、31世火遠理命(山幸彦)、32世天津日高日子波限建鵜葺草葺不合命(彦瀲)、33世若御毛沼命(初代の神武天皇)と続きます。これは、中国の唐代の正史である新唐書には、「初主は天御中主神と号し、彦瀲に至るまで32世、・・。彦瀲の子、神武立ち、更めて天皇を以って号と為し、治を大和州にうつす」と記載されており、符号しています。
そして、28世が天照大御神であり、12世建速須佐之男神の姉の太陽神12世天照大御神として、系図の付け替えが行われたとお話しをされました。30世ニニギノミコトは天照大御神の孫にあたると認識しておりましたので、やはり28世天照大御神もありえると感じました。更に光田先生は、神武天皇の即位は紀元前660年とされているが、実際には卑弥呼の時代である180年頃の後、200年頃に卑弥呼を助けるために出雲から播磨を介して神武東征したのだとお話しされました。お話しをお聞きして、邪馬台国・機内説や九州説等との絡み等、今回のご講義を更に深堀したお話しを聴講したいと思いました。
・第139回月例会 −歴史・文化に親しむ会−
テーマ: 「万葉歌碑の文化情報」
日 時: 2018年 3月28日(水曜日) 16:00〜17:30
講 師: 中西 久幸 (なかにし ひさゆき) 様
( 磯城島綜藝堂 堂主・全国万葉協会 会員 )
日本最古の歌集「万葉集」には4千5百首ほどの歌が集められています。この歌の詞を刻んだものが万葉歌碑で、全国に2000基をこえる碑が建立されているそうです。その万葉歌碑の文化的意義と中西様の取り組みについてお話をいただきました。
40年以上の生涯をかけて万葉歌碑の情報を収集して「万葉二千碑」としてまとめられた故・田村泰秀さんの遺志を継いで活動され、平成20年春から、新設された200件を超える万葉歌碑情報を収集してホームページで発信されています。ホームページにはペンネーム「栗本幸麻呂」で記事を書かれています。
万葉歌碑は近世(江戸期)になってから、空間的歴史記録として建立され始めましたが、その地域は北海道から九州、更にはサンパウロにもあるようです。また、歌碑には、歌と共に、歌人名、揮毫者名、管理者が刻まれるそうです。
そして、例えば、巻5-803の山上憶良歌碑*1は29基といった様に同じ歌の碑がいくつも存在するそうです。
宮城県多賀城市には、清原元輔の歌碑*2があり、恋の歌ではありますが、末の松山を津波が超える事は絶対無いと詠んだ歌が刻まれています。869年の貞観地震の際の津波を引き合いにした歌ですが、東日本大震災時の津波も超えなかったそうで、私達の生活にとり、貴重な記録でもあると感じました。
先生のお話しをお聞きして、万葉歌碑は、必ずしも万葉歌が詠まれた場所に建てられては言えませんが、万葉集をその土地に即して、詠まれた場所とのかかわりを通じて、その地域に暮らす人々の生活、文化、社会、経済といった事を理解する為に有益なものだと理解しました。
*1:山上憶良「しろかねも くがねもたまも なにせむに まされるたからこに しかめやも」
歌意:銀も金も玉もなんの役に立とう。優れた宝も、子供が一番である子等を思ふ歌
*2:清原元輔「ちぎりぎな かたみにそでをしぼりつつ すゑのまつやま なみこさじとは」
歌意:約束したのにね、お互いに涙にぬれるそでをしぼりながら。末の松山を決して波が越すことなんてあり得ないように、二人の愛はかわらないと。
・第138回月例会 −歴史・文化に親しむ会−
テーマ: 「熊楠の図と思想」
日 時: 2018年 2月28日(水曜日) 16:00〜17:30
講 師: 唐澤 太輔 (からさわ たいすけ) 様
(龍谷大学世界仏教文化研究センター 博士研究員)
昨年8月の第132回月例会で「名言でたどる南方熊楠」という演題で、大胆で痛快な彼の人生をお聴きしましたが、再び、「熊楠の図と思想」というテーマで南方熊楠の深遠な図と思想の解説をしていただきました。
先回のご講演をお聴きして、「南方マンダラ」は、森羅万象を捉える方法を構想したもので、その対象である動植物等も宇宙を構成する領域の一つであり、いろいろな領域が入り混じり関わり合って神秘な環境(宇宙)体系について整理したものと認識していました。今回、「事の学」「熊楠の生命の樹」等の多様な図についての解説をお聴きして、
私達が身をおく社会の出来事、交わり、様々な出会い、その結果生じる人の心の変化を体系化しようとしたものであるのではと思いました。理解できない点も多いのですが、特に、心、物、事、印、名、縁、起、因、果について、特に、印象に残りました。
心とは、広く人間の精神世界を指す。物については、現実世界で形を成して存在するもの等、外界の物事を指し、自然科学や物理学の分野はこの対象だそうです。事とは、外界のものごとに心が接した時、心の中に生じる様々な想念(美の概念、夢、想像や思考等)を指すと理解しました。物と心が交錯接して事が生じ、これを繰り返すとまとまった事となり、名(伝説、習慣、宗旨等)を残す事になる。また、事を心から具体的に想起することができるようになるとそれが印だと理解しました。縁は、瞬間に出会うものでこれが重なる事で因果が形成され、そこから別の行動が生まれる事を起と理解しました。講演にご参加された方から「男性と女性の出会い、婚姻」が「物、心、事、縁、印、果、起、印」に例えられるのでは?」と質問され、妙に納得してしまいました。
なかなか理解できないのですが、次の機会があれば、南方マンダラと真言密教の曼陀羅等と何が違うのかお話しを聴きたいと思いました。
・第137回月例会 −歴史・文化に親しむ会−
テーマ: 美術・工芸シリーズT-3
「漆でアート? 美術→工芸→漆芸」
日 時: 2018年 1月24日(水曜日) 16:00〜17:30
講 師: 栗本 夏樹(くりもと なつき)様 (京都市立芸術大学教授)
美術工芸シリーズT-3として漆造形作家で京都市立芸術大学教授でもある栗本夏樹様をお招きし「漆でアート? 美術→工芸→漆芸」と題しお話をいただきました。
先生は、高校に進学されて、日本拳法部、映画研究会、美術部(油絵)と各種体験を経て、美術の先生になろうと思われたそうです。進学予備校に通う中で、工芸というより造形のすばらしい八木一夫の陶芸作品に出会い、焼物の道を目指そうと京都市立芸術大学の工芸科に進まれたそうです。しかしながら、大学1年で受講必須の陶器、染織、漆の体験を通して、古来の漆工芸ではなく漆造形という世界ならパイアオニアになれるかもしれないと感じ、以来、漆造形の道に進まれ、現在は、大学で漆芸を教える事とご自身の作品を作る事をお仕事にされているそうです。
漆を単に塗料や接着材の材料としてではなく、「再生する/命を生み出す」為の橋渡しをするものとして捉え、使命感や責任を感じ漆造形に取り組んでおられるそうです。映像によりご紹介いただいた様々な作品(車のボンネット/ケヤキの樹皮/荷造り用紐/紙/紙管等に漆をほどこした)に、生み出された新しい命(新しい価値創造物)を感じました。「漆造形により人間を追い求めている、表現の完成度を追求している」というお話しをもっとお聞きし、可能であればディスカスしてみたいと感じました。