・第204回月例会 −歴史・文化に親しむ会−
テーマ: バロック音楽の響き
日 時: 2023年 8月23日(水曜日) 15:30〜17:00
場 所: 大阪公立大学 文化交流センター
大阪市北区梅田1-2-2-600 大阪駅前第2ビル6階
講 師: 春名修介(はるな しゅうすけ)様
大阪大学大学院情報科学研究科 招聘教授
講師は、NHKの「朝のバロック」で、バロック音楽に出会い、以後、四十年強、バロック音楽を聴き続けてこられたそうです。1600年〜1750年頃がバロック音楽の時代だそうで、シュッツ(ドイツ)、モンテベルティ(イタリア)、バッハ(ドイツ)、ビバルディ、ヘンデル(ドイツ、英国)が代表的作曲家だそうだ。ご講演では、各作曲家のバロック音楽を聴きながら、その響きと曲の特徴について解説していただきました。バロック時代以前は、声楽中心の教会音楽だったそうです。1600年になると、現在の楽器の原型がほぼ完成し、声楽に器楽が加わって、楽しいバロック音楽が花開きました。富裕市民や王侯貴の養護により、オペラが誕生し、バレエ、ダンスが流行したそうです。対位法を用いた曲に通奏低音の音を重ねたところが、バロック音楽の特徴だそうで、主題となる旋律を真似る、あるいはアレンジした旋律で、繰り返し追いかける技法の楽曲で、楽器の対比、人の声と楽器の対比、人の声の対比の音楽だと説明されました。ドイツ、イタリア、フランス、イギリスのバロック音楽の違いや、代表的作曲家が果たした事について、実際の楽曲を鑑賞しながら、解説をしていただきました。通奏低音として流れるチェンバロの音が、とても印象に残りました。バロック音楽は、形式が決まっている音楽が多く、時代劇水戸黄門の様な安心感が好きだと締め括られました。
・第203回月例会 −歴史・文化に親しむ会−
テーマ: 大安寺の365日 〜 古刹大安寺と元銀行員の私 〜
日 時: 2023年 7月26日(水曜日) 15:30〜17:00
場 所: 大阪公立大学 文化交流センター
大阪市北区梅田1-2-2-600 大阪駅前第2ビル6階
講 師: 河野 裕韶(こうの ゆうしょう)様
大安寺 副住職
講師は大阪の一般家庭で生まれ育ち、一般大学を卒業した後、銀行員として働いておられましたが、縁あって大安寺で副住職として働くこととなり、高野山での修行等を経験して、現在悪戦苦闘しながら法務に従事しておられます。大安寺は、奈良時代には南都七大寺の一つに数えられる天皇立寺院で、26万u(甲子園球場約6.8個分、現在の約25倍)の境内地に887名もの学僧(国内外含む)を擁する巨大寺院だったそうです。しかし東大寺建立や平安遷都によって衰退し、江戸・明治期には大安廃寺と呼ばれたそうです。昨年末『癌封じの寺 大安寺の365日』という本を出版されました。この本で伝えたかった「僧侶に転身して良かった」「仏教は面白いし役に立つ」「大安寺をもう一度かっての高みへ」の思いについてもお話しされました。お話をお聞きしますと、銀行員であった経験も活かしながら、大安寺のお役立ち度合いを高める変革に努めておられ、クラウドファンディング活用による宝物殿の増改築工事や天平伽藍CG復元プロジェクト、東博での大安寺仏像展等を実現されておられます。「ファーストペンギンになりたい。」という講師の言葉に講師の強い意気込みを感じたご講演でした。
・第202回月例会 −歴史・文化に親しむ会−
テーマ: 徒然草シリーズ 第2回 「境界者・兼好」
日 時: 2023年 6月28日(水曜日) 15:30〜17:00
場 所: 大阪公立大学 文化交流センター
大阪市北区梅田1-2-2-600 大阪駅前第2ビル6階
講 師: 光田和伸(みつた かずのぶ)様
(国文学者)
兼好(卜部兼好)は伊豆の国の生まれという強い伝承があります。卜部家の本貫地は鎌倉に近い伊豆の国なのです。『徒然草』には、東の国(鎌倉をはじめとする関東)と東の人に対する関心、共感があちらこちらに見られるとのことで、東の心と西の心に関するお話を主に約20の段の解説をしていただきました。例えば、第45段では、「従二位の良覚僧正が、『榎木僧正』、『きりくひの僧正』等と二つ名で呼ばれる事に腹を立てた。」という話ですが、講師は「東の人々が京(西)に入ってきてマナーが悪くなったと憂いている話だ」との事。第141段は、「悲田院の尭蓮上人は、東の国から来た客が『東の人が言うことは信用できるが、京の奴らは口先ばかりで信用ならん』という話に対し、尭蓮上人は、『長く京に馴染むと、京の人間の心が荒んでいるように思えない。京の者は、心が優しくて情にもろい。人からお願いされると断れず頼み事を承諾してしまう。貧しい為に思い通りにならないのです。私の故郷の東の国の人は、愛情が軽薄で偏屈頑固だから、最初から嫌だと言って断ります。』と説いた。」といった話ですが、講師は、「決して東の人をけなしている訳ではない。東と西が溶け合った時、新しい世界が生まれると言いたかった。」との事。現代の私達にも心響く書物であることを改めて感じました。
・第201回月例会 −歴史・文化に親しむ会−
テーマ: 薩摩琵琶について
日 時: 2023年 5月24日(水曜日) 15:30〜17:00
場 所: 大阪公立大学 文化交流センター
大阪市北区梅田1-2-2-600 大阪駅前第2ビル6階
講 師: 杭東 詠水(くいとう えいすい)様
錦心流薩摩琵琶
全国一水会理事 / 詠水会会主
薩摩琵琶の歴史と特徴についてのお話と、実演をしていただきました。琵琶の起源は、古代ペルシャ(今のイラン)の楽器リュートだそうです。伝来ルートは2つ有り、1つは、西域を通って漢の時代に中国に「漢琵琶」として伝わった。日本でも雅楽に使われ「楽琵琶」とも称されている。他の1つは、インド古来のヴィナと融合した「インド琵琶」としてインドに伝わった。「インド琵琶」は、中国を経由して、奈良朝に伝来し「盲僧琵琶」となった。「盲僧琵琶」は、「京都盲僧」を経て、1500年頃に島津日新斎忠良による「薩摩琵琶」誕生にと繋がり、明治になってから北九州の「盲僧琵琶」は、「筑前琵琶」誕生に繋がったそうです。「薩摩琵琶」の特徴としては、@4弦5柱ではなく4弦4柱にした事で音の余韻を様々に変化させる押し干奏法を可能にした事A腹板の材質を固い桑の木にする事で、撥で腹板を叩き勇壮な大きな音を出す弾法を可能した点だそうです。実演では、勝海舟作詞・西幸吉作曲の演目「城山」と、義経一行が安宅の関を弁慶の機転で通り抜ける事ができるという演目「勧進帳」の曲を語り演奏していただきました。質疑の中で、新しく作詞作曲される事はほとんど無いとお聞きして、寂しく思いましたが、大切にしたい文化だと感じたご講演でした。
・第200回月例会 −歴史・文化に親しむ会−
テーマ: 本当のウクライナ − 過去・現在・未来 −
日 時: 2023年 4月26日(水曜日) 15:30〜17:00
場 所: 大阪公立大学 文化交流センター
大阪市北区梅田1-2-2-600 大阪駅前第2ビル6階
講 師: 岡部 芳彦(おかべ よしひこ)様
神戸学院大学 経済学部 教授
ウクライナ大統領附属国家行政アカデミー 名誉教授
自ら何度もウクライナを訪問され、ウクライナの人々との交流やゼレンスキー大統領とも面識があり、ウクライナ侵攻以来、ウクライナ問題に対するコメンテイターとしてウクライナや日本のマスコミで活躍されている岡部義彦様にウクライナ民族衣装「ヴィシヴァンカ」を着てお話をして頂きました。ウクライナ侵攻は、表向きは昨年の2月24日に始まったが、実際はウクライナがロシアから独立した30年前から始まっている。ロシアとのガス紛争が続いたり、2014年、クライナ領であったクリミアの一方的ロシア併合紛争が起きているとの事。プーチン大統領は、ウクライナに侵略するため、プロパガンダを通じて長年「ウクライナは、ネオナチに支配され、東ウクライナでロシア語を話す人達を虐殺してきた。そんな人達を解放するためにZマークの人達が戦っている」とロシア国民を信じこませてきたのだと話されました。プーチンは、「その昔、モスクワとウクライナ等を含む地域はキエフ・ルーシという国であったので、ウクライナはロシア発祥の地でありロシアに従属すべく国だ。」と主張する妄想の歴史観を持つ権威主義者だ。対して、元コメディアン芸人で機械主義者(オポチュニズム)であるゼレンスキーのロシア外交の失敗が、プーチンのウクライナ侵略の一番の原因ではと話されました。講師のお話を聞き、水と油のようなプーチンとゼネンスキーが歩み寄る事の難しさを予感すると共に悲しい思いで一杯になりました。
・第199回月例会 −歴史・文化に親しむ会−
テーマ: 徒然草シリーズ
第1回 「あやしうこそものくるほしけれ」
*:本シリーズ開催予定日 第2回:6/21(水)、第3回:9/27(水)
日 時: 2023年 3月22日(水曜日) 15:30〜17:00
場 所: 大阪公立大学 文化交流センター
大阪市北区梅田1-2-2-600 大阪駅前第2ビル6階
講 師: 光田 和伸(みつた かずのぶ)様 (国文学者)
兼好法師 没後670年にあたり、光田先生が長い間理解しにくかったと述懐されてる『徒然草』について第1回目(3回シリーズ)のご講演をしていただきました。
「徒然なるままに日暮らし硯に向かひて・・」と語りおこされる序文は「あやしうこそものくるほしけれ」と結ばれています。光田先生の「@徒然草は、すばらしい恋愛小説だ。A最初に序文を書き、第30段を書いたところで中断した。B第29段は亡くなった方の手紙を見てその切なさを表し、第30段は亡くなった方の四十九日法要を終えた後の悲しみを書いたものだ。C第31段以降は10年後に再開した。」というお話しに、「徒然草は、愛する女性について書いたもの」で、「あやしうこそものくるほしけれ」は女性への切ない思いを表現したものだと理解しました。『徒然草』は、兼好の生前には全く世に知られていませんでした。その死後 100年ほどたった1431年に歌僧「正徹」が初めて書写したそうです。光田先生は、「兼好は、亡くなった方の縁故やその子孫への配慮から、その弟子に100年間公表を禁じたと思われる」と話されました。光田先生が、第108回月例会で徒然草の「榎木(えのき)の僧正」について御講演いただいた時、「徒然草は、吉田兼好の愛する女性との恋物語だ。」と話された事が、少し理解できました。「徒然草」を読み理解を深めて、2回目、3回目の講座に参加したいと思いました
・第198回月例会 −歴史・文化に親しむ会−
テーマ: バブル期の日本に来た演奏家たち
日 時: 2023年 2月22日(水曜日) 15:30〜17:00
場 所: 大阪公立大学 文化交流センター
大阪市北区梅田1-2-2-600 大阪駅前第2ビル6階
講 師: 丸山 昌信(まるやま まさのぶ) 様
関西クラシック音楽同好会 代表世話人
丸川様は、永年にわたり大阪フィルハーモニーの定期会員としてクラシックに親しまれ、FM放送や海外のレコード盤でクラシック音楽に親しまれ、関西クラシック音楽同好会で活躍されてこられました。さて、1980年代、バブル絶頂期の日本には、海外の有名な音楽家が来日し名演奏を聴かせてくれたそうです。1988年に来日した外国のオーケストラは、28もあったそうです。今回のご講演では、来日した音楽家の内、特にドイツにゆかりの深い音楽家であるセルジュ・チェリビダッケ、スタニスラフ・ブーニン、クラウス・テンシュテット、ヘンベルト・ケーゲル、カルロス・クライバーのライブ演奏の触りを鑑賞しながら、各音楽家のエピソードについて紹介いただきました。中でも、「クライバーは、意に沿わないとキャンセルする仕事ぶりだが、そんなリスクがあるにも関わらず彼が指揮する演奏会のチケットは常に売り切れた。1981年の「ポエーム」日本公演は伝説的な名演となっている。」「ブーニンは、ショパン国際ピアノコンクールに優勝の後、来日、日本人と結婚、阪神淡路大震災・東日本大震災等多くのチャリティ公演を多く開催された。」との紹介が強く印象に残りました。音楽鑑賞をしながら解説いただく形態の月例会開催は、初めてでしたが、クラシックを見直す良い機会となりました。
・第197回月例会 −歴史・文化に親しむ会−
テーマ: オラドゥ―ル村虐殺事件と独仏和解 〜 惨劇・和解・配慮 〜
日 時: 2023年 1月25日(水曜日) 15:30〜17:00
場 所: 大阪公立大学 文化交流センター
大阪市北区梅田1-2-2-600 大阪駅前第2ビル6階
講 師: 中祢 勝美(なかね かつみ) 様
天理大学 国際学部 准教授
第二次世界大戦時のナチスによるホロコートが主にドイツ以東で展開されたことは広く知られていますが、フランスの小さなオラドゥール村でも虐殺事件が起きました。連合軍がフランスのノルマンディー海岸への上陸作戦を敢行した4日後の1944年6月10日に、約150名のナチス親衛隊が、村を襲いわずか半日で、642名(男性181名、女性254名、子供207名)を虐殺し、村中を破壊したのです。村中の女性と子供は教会に押し込められ、逃れた女性1名を除き虐殺されました。村の生存者はたった6名だったそうです。ドイツの残虐行為を忘れない為、廃墟と化した村は、そのまま保存され、村の入口には「記憶センター」が設けられています。事件から9年後の裁判では、虐殺を指揮した将校が一人も出廷しなかった等の理由で、生存者や遺族の怒りが収まらず、村はフランス国家との全ての関係を拒絶した。その後、事件から39年後の裁判で、やっと将校の一人が上官の命令で事件を起こした事を認め、終身刑の判決を受けた。事件が起きたオラドュール村の教会で、ドイツのガウク大統領が事実を認め、生存者エブラスさんをフランスのオランド大統領と共に両脇から挟むようにして手を握る事ができたのは、事件から69年後だそうです。和解に尽力されたオラドュール村のフリュジエ村長は、「ドイツに求めたのは謝罪ではなく、事実を認める事」と話されているそうで、この事実を認める事が大変難しい事なのだろう。ウクライナとロシアの戦争や韓国と日本との関係の解決も同様に難しく、長い年月が必要なのだろうと感じたお話しでした。